仮想化やクラウド化、モバイル活用など、新たなITの潮流に乗って事業領域を拡大するためには、技術者が保有すべきスキルセットを、新たな事業戦略に合わせて見直していくことが重要な課題となる。そしてその第一歩が、現状の定量把握を基にした適切な技術者教育プランの立案だ。
そのツールとしてGAITの活用を開始したのが、ネットワンシステムズ株式会社だ。同社は1988年設立の国内最大手ネットワークインテグレータとして、創業以来一貫してネットワーク基盤の設計・構築・運用に強みを持ち続け、シスコシステムズ社製品の取り扱いに関しては国内屈指の実績を誇っている。しかし「最近ではネットワーク基盤のみならず、より上位のレイヤーへとビジネス領域を拡大する必要が生じています」と、竹下隆史氏は語る。仮想化技術の進歩によって、ネットワークとコンピューティングの境界線が曖昧になってきたためだ。
このような状況に対応するには、ネットワーク中心に培われてきたスキルポートフォリオを定量化し、今後求められるスキルセットとのギャップを明確化した上で、解消する必要がある。
「これまでのスキルズインベントリは上司によるインタビューに基づいており、定性的な情報しか得られませんでした」と竹下氏。この問題を解決できる手段として、2012年4月にはGAITに着目していたという。しかしすぐに導入に至ったわけではなかった。
まず、新しい技術者育成プログラムとして、ベンダーの資格試験やほかの公的認定試験を活用した。2012年10月~2013年3月にかけて、ネットワーク機器ベンダーや、Linux技術者向け認定試験を推奨。「しかし、取得数は予想したほどは伸びませんでした。また、技術者個人のスキルを定量化する手段としては、必ずしも適していないという課題も残っていました」と竹下氏は振り返る。
そこで2013年4月にスキルの定量化に向けた検討を本格化。2013年7月にGAIT採用を決定する。GAITが実施されたのは、2013年7月29日~8月23日の3週間余りの期間だったが、約1,100名の技術者に受験を義務づけた結果、98%の受験率を達成した。
「今回は自ら率先して受験する社員が多く、モチベーションが高かったという印象です」と話すのは、業務管理グループ担当 取締役 執行役員の片山典久氏。“自ら動く”というのは会社の行動規範にも合致する。また、竹下氏は「自分の知識レベルが定量的な数値として出ることが、このモチベーションにつながったのではないでしょうか」と分析する。
その一方で「受験が手軽に行えるのもGAITのメリット」と指摘するのは、業務管理グループ 人事部 部長の林 達郎氏だ。インターネット接続環境があれば受験可能なため、業務の手が空いた時間に自席で受験できる。
問題の分布に偏りが少なく、各業界の平均点と比較できる点も評価が高い。「部門ごと・個人ごとのデータ分析はこれからですが、全社的な傾向として、ネットワークに強みがあることはデータに表れています」と竹下氏。これは当初の想定通りであり、データの信頼性も十分に高いという。
今後はデータ分析を詳細に行い、今後の技術者育成プランに生かしていく計画だ。
「当社は2013年5月にコーポレートロゴを一新していますが、そのモチーフは“匠”という漢字で、日本ならではの“匠の技と心”を、個々の社員が目指していこうという意思が込められています」と片山氏。もちろん特定分野のスペシャリストだけでなく、幅広い領域をカバーする社員も必要になるが、誰がどの道を選択し、スペシャリストを目指すにはどの分野を選択すべきなのかという判断材料として、GAITの結果は重要な役割を果たすはずだという。
ネットワンシステムズではこれからも、年に1回のペースでGAITを実施する予定だ。
「当社は自社で生産・製造した商材を扱っている企業ではありませんから、最も重要な資産は人財です。その価値をさらに高めることで、すべてのステークホルダーから信頼される“アドマイヤード・カンパニー”になることを目指します」(片山氏)。
※今回お話を聞かせていただいた方々の社名並びに所属並びに役職は、取材当時のものです。