書籍や映像・音楽ソフト、ゲームなどのレンタル、販売店である「TSUTAYA」を日本全国でフランチャイズ展開する株式会社TSUTAYA。リアル店舗とオンラインの両方で幅広くサービスを展開し、新しいライフスタイルを提案している。同社 IT本部 IT管理ユニット ユニットリーダーの田中 啓史氏は、「当社では今、2017年にスタートした“TSUTAYAプレミアム”に特に力を入れています。ネットとリアルを結びつけ、お客様に“良いね”と言ってもらえるサービスをITで実現していく取り組みをしています」と語る。TSUTAYAプレミアムは、店舗では旧作DVD/Blu-rayが借り放題で延長料金・返却期限なし、ネットでも動画見放題(新作・準新作などを除く対象作品)のサービスだ。
同社のIT本部は8つのユニットで構成されている。その中の1つであるIT管理ユニットは、IT本部全体を効率的かつ最適に運営するために「人・モノ・カネ」の3つの観点で各ユニットを横断的に管理する役割を担う。その中でいくつかの課題があったという。
昨今、IT業界は売り手市場が続いている。「人材の定着率向上は当社にとっても大きな課題です。隣の芝生は青く見えるものですから、当社の芝生も青くする必要があります。人材の定着率、あるいは社員のモチベーションの向上、帰属意識を高めるためにも、社員のITスキルを評価し報いる制度が必要だと考えました」(田中氏)
しかし、同社ではITにかかわらず、経理や法務など専門職の評価制度を設けていなかったという。「IT本部の人材が世の中で通用する人なのか、その人が市場に出た時にどのような価値があるのかを把握できていないということも課題でした。IT人材の価値をどう測るかが分からず、社員が持つITスキルを把握するための物差しがないだろうかと考えていました」(田中氏)
ITスキルを評価する制度を設けていなかったのには、同社の企業文化が背景にある。同社ではITサービスの開発やインフラの構築などにおいては、自社だけで開発を進めるのではなく外部のパートナーと協力をして取り組む。そのため、外部のパートナーや事業部門とコミュニケーションを取りながら、自分たちが考えた通りのことができているかをチェックし、舵取りをするといった、上流工程の仕事が多い。それゆえに、採用や人材評価においても、基礎的なITスキルはもちろん必要とするが、コミュニケーション能力を重視したものになりやすいようだ。
2018年の4月頃からITスキルの評価制度について検討を始めた。当初は社内で多面評価を行う制度の構築も検討したが属人的になるとの懸念の声もあったため、外部のITスキル可視化サービスを探し始めた。
さまざまなITスキルの可視化サービスを検討し、出会ったのが日本サード・パーティの提供するグローバルITアセスメント「GAIT」だ。TSUTAYA IT本部 IT管理ユニットの諸川 未穂氏は、「いくつかのサービスを比較、検討しました。その中でGAITは多くの企業で長い実績があり、とても安心感がありました」と語る。田中氏も「GAITは、TOEICのIT版のような印象を受けました。公明正大に第三者が評価するアセスメントで、他業種や同業他社との比較などもでき、非常に分かりやすくスキルを可視化してくれるサービスと感じました」とその評価を話す。
2018年8月にはIT本部の中からさまざまなプロフィールの10名を選抜してトライアルを実施した。「受験者からは、教科書にあるような内容ではなく、実務を経験していないと回答できない設問もあって、“センスの良い試験だ”という意見が出ていました。私たちが想定していた結果とも非常に近く、GAITであれば評価制度に活用できるということで正式に採用することとしました」(諸川氏)
IT本部の現場社員を対象にGAITを運用し、年1回のペースでGAITによるアセスメントを行い、その結果を評価していく。「評価については、シンプルで分かりやすくしようという基本的な考えがありましたので、点数に応じて評価するという形にしました」(田中氏)。
早速、泊まり込みでの勉強合宿を企画しているグループもあるそうだ。「社内のルールも変えなくてはならない評価制度ですので、長い目で取り組んでいこうと考えています。メンバーからのアイデアも取り入れつつ、点数至上にならないよう、さらに評価制度自体をより良くしていこうと考えています」と田中氏は今後の展望を述べた。
※今回お話を聞かせていただいた方々の社名並びに所属並びに役職は、取材当時のものです。