株式会社日立ソリューションズ

客観的な評価指標でITSSを補完、若手技術者の教育計画の礎に

約8000人に上る技術者で日立グループ 情報・通信システム事業の中核を担う株式会社日立ソリューションズ。ここでは若手技術者のIT知識を詳細に可視化する手段として、GAITの活用が始まっている。GAITのスコアレポートは、技術研修を客観的に選択することを可能にし、バランスの取れたIT知識の獲得に役立つと期待されている。

  • 本社所在地
    東京都品川区東品川4-12-7
  • 資本金
    38,758百万円
  • 従業員数
    15,452人(連結・2013年3月31日現在)
  • 事業内容
    ソフトウェア・サービス事業、情報処理機器販売事業
  • URL
まずはバランスの取れた知識を獲得してもらい、その後、得意分野に特化した知識を獲得するというモデルを創り上げたいと考えています。これによって若手技術者の技術力を向上させていきたい(松田氏)

クラウド活用が企業にも拡大することで、SIerの技術者に求められるスキルも多様化し始めている。共通言語となる基礎的な知識はもちろん不可欠だが、それらに加えて仮想化やセキュリティ等の新しい知識も必要になってきた。自社の技術者にこれらの知識をバランスよく獲得してもらうにはどうすればいいのか、悩んでいるSIerも少なくないだろう。

この課題を解決するため、GAITの導入に着手したのが株式会社日立ソリューションズである。同社は日立グループの情報・通信システム事業の中核を担うIT企業。多様なソリューションを全体最適の視点で組み合わせ、顧客にワンストップで提供する「ハイブリッド・インテグレーション」を実現している。このようなビジネスを支えるため、人財を可視化し、戦略的人財マネジメントを行っている。

人事総務統括本部
人財開発部 部長
松田 欣浩 氏
人財開発部
教育第1グループ 主任
野田 洋平氏

若手のIT技術者はGAITで知識を詳細に測ることが大事です

特に入社5年目までの若手技術者のIT知識は、詳細に把握する必要があると考えています。ここでバランスの取れた知識を獲得できるか否かは、その後のキャリアパスにも大きな影響を与えるからです(松田氏)

「人財ポートフォリオの可視化に関しては、これまでもITスキル標準(ITSS)の職種レベルのアセスメントを活用してきました」と説明するのは、人財開発部部長の松田欣浩(まつだ・よしひろ)氏。しかしITスキルを詳細に可視化するのは、ITSSだけでは難しいと言う。「特に入社5年目までの若手技術者のIT知識は、詳細に把握する必要があると考えています。ここでバランスの取れた知識を獲得できるか否かは、その後のキャリアパスにも大きな影響を与えるからです」。

松田氏がGAITに着目したのは2012年秋。IT知識を詳細に数値化できるGAITであれば、ITSSを補完できると考えたという。メインとなる人財ポートフォリオの可視化はITSS、ITSSでカバーしきれない若手技術者のIT知識はGAITで可視化しようということだ。そこでまずは、2013年に入社した新入社員140名を対象にGAITの活用を計画した。

「実際にGAITでテストすることで、新入社員の知識に偏りがあることが分かりました」と言うのは、教育第1グループ主任の野田洋平(のだ・ようへい)氏だ。これは受験者個人が元々持っていた知識レベルはもちろんだが、3カ月間の集合研修の内容も関係していると説明する。「例えばDBやアプリケーションは集合研修のカリキュラムに含まれていたこともあり、比較的高い得点になっています。これに対してネットワークや仮想化については、集合研修のカリキュラムより専門性が高かったため、結果的に得点が低い傾向となりました」。

このような“知識の偏り”を可視化できることは、大きな意味があると野田氏は指摘する。その後どのような研修を受けるべきかを、客観的に判断できるからである。

GAITのスコアレポートを若手社員の育成に活用したい

日立グループには数百にも及ぶ研修カリキュラム体制が整っている。しかしどの研修を受講するかは、受講者個人の判断に委ねられているため、本来、身につけるべきスキルの学習機会を逃してしまう危険性があるのだ。

「プロジェクト経験の少ない若手層の技術者は、実務で修得できるIT知識も特定分野に限定されがちです」と説明するのは松田氏。持っている知識だけでも業務を遂行できてしまうため、他のIT知識が必要だと実感できないのだと言う。その結果、ビジネス系の研修を選択する傾向が強くなる。しかし実際にはIT知識が不足しているため、他のプロジェクトに参加したときに十分な活躍ができないことも少なくない。

不足している技術分野がGAITで可視化されればこのような問題を解消でき、人財開発部が、GAITのスコアレポートをもとに、受けるべき研修をガイドすることも可能になる。同社はPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルで人財育成を行っているが、“Check”のフェーズをGAITで強化することで、その後のフェーズのあり方が大きく変わるのだ。

さらに野田氏は「日本サード・パーティのサポート体制も評価しています」と言う。実は今回の受験では、ネットワーク上の問題が発生した。その際、日本サード・パーティの担当者は即日現場に駆けつけ、1週間以内に問題原因を突き止め、改善策を提案した。結果、新しい方法で再度受験を実施することができたのだと言う。

日立ソリューションズは今後も、入社5年目までの若手技術者を対象に、GAITの結果を経年比較していく方針だ。「まずはバランスの取れた知識を獲得してもらい、その後、得意分野に特化した知識を獲得するというモデルを創り上げたいと考えています。これによって若手技術者の技術力を向上させていきたい」と松田氏は結んだ。

※今回お話を聞かせていただいた方々の社名並びに所属並びに役職は、取材当時のものです。